メニューT ゲリ長たいやき論争勃発! 〜宮ちゃんVSノブサン〜 * 2005年一月後半の某日。ゲリラリラ長野支部はようやく活動を再開させてもらいました。と言っても今回は初期メンバー三人が集まるだけに留まって、小規模な訓練をやらせてもらった訳です。 冬と言う事でガスがメインの宮ちゃんに配慮してエアコキ戦をやらせてもらったのですが、始めは和気藹々と良い雰囲気のまま、雪の残る長野県のヤマゲリ山で良い汗流してました。 でもそれが、あんな惨劇を生むなんて、僕たちは思いもしなかったのです……。(←三流) 1 ヤマゲリラは知的好奇心が旺盛な少年である。それは、学力的にが非常に高レベルな某学校にひーこらひーこら言いながらも普通に通っている事からも判る所であり、またその興味の幅は非常に広く、先見の明に満ちている事も周知となっていた。なんでそんな少年がアホなメンバーと組んでんでしょうかね。 そんな感じだから、ヤマゲリラはその奇妙な足跡を見逃す事ができなかったのである。 足跡、であった。雪の積もった場所で発見された、奇妙なそれ。降ってから時間が経っているから表面が少し凍ってはいるが、目が痛くなるほどの純白が土を覆い隠している。そこにくっきりと刻み付けられた足跡は、今までで見覚えの無い物であった。 ――なんだろう。鹿、かな? 猫にしては少し大きい。犬にしては少しおかしい。熊にしては小さい。小熊、とも考えもした。しかし小熊が単独行動などするだろうか。てか、雪降ってる時期なのに起きてるだろうか。何で歩いとるのよ普通に。しかもここらへんで熊が出没した記憶も無いし。 そんな訳で、鹿、という仮説を立てもしてみた。だが鹿の目撃例はない。じゃあ違うんじゃないの、と思えたので、彼の潜在意識が知的欲求を瞬時に掻き乱したのである。 (これはなんだろうか。判らない。だから知りたい。非常に興味のある案件だ。自分の土地の事を知りたいと思うのは当然の事だよな。じゃあ大丈夫か。特に危険性も無さそうだし。よし、行こう!) ポジティブ・シンキング。ゲリ長の伝統的なスタンスで、ヤマゲリラは簡単に答えに辿り着く。きまったならばもう、彼はいてもたってもいられない。そんな性格だ。せっかちですね。 なのでヤマゲリラは後ろを向いた。 「宮ちゃん、ノブサン!」 『うい?』 小屋の中でガハハガハハやってた二人が振り向く。ヤマゲリラはそんな彼らに嬉々とした表情を向けた。 「探検してくる!」 「へっ? 探検?」 「ヤマゲリラさん、それってどういう――」 ヤマゲリラは彼らの言葉に聞く耳もたず。怪しまれないように早歩きで、しかし物凄いスピードで、ダバダバと山奥へと進んでいくのであった。 後には呆然とする二人だけが残される事になるのだが、リーダーにはそんな事は知ったこっちゃ無いのである。 せっかちですね。(←保護者気分) 2 「行っちゃったよ……」 「どうするかねぇ……」 嘆息する二人。早歩きで迅速に駆けていくヤマゲリラの後ろ姿はもう遥か彼方であった。それに凄いなぁ、と宮ちゃんは嘆息していたりいなかったり。 とりあえず小屋の中に戻った二人は、ヤマゲリラが戻ってくるのを待つ事にした。 「いやはやあれだね」 「あれじゃわかんねぇよ」 「平仮名ばっかで読み難いしね」 「今度は何言ってるのかわかんねぇよ」 「最近、梅しばが美味いんだよ」 「梅しばか。微妙だと思うぞ」 「そう言いなさんな。梅しばは種が面倒だが、カリコリ感が最高よ?」 などと雑談を交わす二人。暇潰しには、話をする、と言うのは素晴らしい事だ。言葉を開発してくれてありがとう人間。 「美味いって言ったらホームラン軒ですよ。こないだスーパー行ったらホームラン軒が売っててな。いやはや懐かしいの美味いのって。あれは素晴らしい」 「あれ、こないだまでカップ麺はヤキソバって言ってなかったっけ?」 「一平ちゃんを始めとする数々のヤキソバは十日間ぶっ通しで食ってたら飽きた。こうなると醤油ラーメンがスタンダートに美味なり」 「いい加減だな。その内、ラーメンも飽きるんだろ?」 「うんっ!」 「いい加減にしろ!」 「有難う御座いました」 「終われねぇよ!」 スパァン、と快調にどつかれる宮ちゃん。最近のお笑いブームにかまけて、行数を稼ごうと言うセコイ作戦に出始めましたね。しかしそんな自分の軽はずみな行動に反省し、彼はすかさず話題を変えた。 「しかしあれだね」 「だからあれじゃわかんねぇって」 「美味いと言ったらたいやきだね。最近、下校途中にたいやき屋見付けてさ。まだ食ってないんだけど、久しぶりにあのつぶあんぶりが食いたいね」 「たいやきか……。実は俺、カスタード派なんだよね」 「何ぃ!?」 突然の宮ちゃんの大声に、ノブサンが少しビクリとした。しかし宮ちゃんは、構いもせずに立ち上がり、ノブサンに指を突き出す。 「貴様、カスタード・クリームなど外道だ! たいやきはあんこだと、昔から決まっているだろうが!」 えっ? 怪訝な表情が浮かぶ。唐突な激昂に困惑するノブサン。 「いや、おい、落ち着けって。別に良いだろうがカスタードがあっても。だいたい俺、あんこは粒よりこした方が好きなんだよ」 「こ、こしあんだとー!? この真外道め、たいやきにつぶあんは伝統的な、日本が世界に誇る、素晴らしい文化ではないかー!」 火に油の様相を呈して来たが、宮ちゃんの押し付けがましく、かつ幼稚な物言いに、やっぱりノブサンは困惑するばかり。 「それはおかしいだろうが。商品としてカスタードがあり、昔から『こし』と『つぶ』の二つがあんこの伝統として存在してたんだ、そんな一方的な物言いは、単なる押し付けでしかない」 「うぬぬぬぬっ……減らず口を叩きおってぇぇぇぇっ!」 宮ちゃんの咆哮。同時、彼は小屋を飛び出した。 「お母さんのバカー!」 一瞬の幼児退行現象が言わせた言葉である。若いな、フハハハハ。 「お、おい宮……」 ノブサンがひょっこりと小屋から顔を出すと、宮ちゃんは退行から抜け出して怒りの表情のままノブサンを睨み付ける。 「こうなったらノブ、どちらの主張が正しいか、勝負だ!」 ウージーの銃口を突き付けながら、宮ちゃんが宣言する。 「はっ?」 やっぱり当惑のノブサン。 「いや、主張の正しさって、そんな俺らで片付くような小さな問題でもないだろうが。だいたい、個別な趣味の違いって事で充分丸く収まるからさ。そんな原理主義的な主張は合理性に欠けるぞ」 「うるさい、決闘を申し付ける!」 宮ちゃんは瞬時にポケットに手を突っ込むと、白い物を投げて遣してくる。なんだと思って見てみると、軍手が片方だけ。 「お前……冷え性に気を使ったつもりだろうけど、こんな果てしなく無意味な物を遣すなよ」 でもいぼ付きなのは有り難いよね。 「ええい、違うわ! 決闘状代わりの手袋だ!」 宮ちゃんが理不尽に怒鳴る。 「軍手じゃん……」 「黙れこの! だが私は決してカスタード・クリームを認める訳にはいかん! その様な若さゆえの過ち、認められないんだよ!」 一気に捲し立てると、宮ちゃんはそのまま怒涛の如く突っ走っていってしまったではないか。決闘方法も告げずに。彼もまたせっかちなんですね。 「ったく、世話の焼ける原子だ……」 溜息一つ。でもノブサン、原子は皆、同じ物ですよ。 彼は仕方なく、ヤマゲリ山を登り始めるのであった。 その頃の宮ちゃんは。 ずっこけていた。 ぬぅっ、と一つ、呻く。しかも苦しげに。 「な、何故だ……」 彼が躓いたのは、ヤマゲリ山の中腹辺りに何故か張られているワイヤーであった。危ないですね。でもこれが無いと柵が落ちてしまうのだ。じゃあ、しょうがねぇよ。 と言うよりも、頭に血が上り過ぎて気付かない宮ちゃんもどうかと思う訳でありまして。たいやきでそこまで熱くなってもらっても困るのが実情なわけなのである。 だいたい、何回も山に来てるんだから、そこに危険物があるくらいは解っていても良いと思う訳でありまして、そもそも何故にそんな所に躓くのかと言うのがまた、我々としては理解しがたい現実なのであります。これはそもそもにして宮ちゃんの散漫な注意力が原因で、なによりもこによりも云々―― 「ええい、引っ張り過ぎだ!」 空に向って一喝。太陽なんて嫌いだー。(私は、好きだー。と、ハ○ムさん) でもまあ、この御陰で多少は頭が冷えたようで、彼は自我に目覚めて自分のやっている事に反省をした。ムクリと起き上がって、吼える。 「ちきしょう、皆、俺を馬鹿にしやがってー!」 ………………。 まだまだ子供なんですね。(←保父さん気分) * ワルサーMPLにストックはない。だが、ノブサンはスリングと合わせる事でストックの代行を用意し、正確な照準を確保する事を可能とした。 件のMPLを前面に出し、ゆっくりと、進軍する。途中のワイヤーの所で落ち葉が錯乱していたのを不審に思いもしたが、まぁそれはあえて無視の方向で。 とりあえずはフロント・サイトとリア・サイトを合致させながらの前進。乱視気味の右目を庇う為に照準は左目で行う。こういう時はストックが邪魔にならないMPLは有用だった。 なんだか自分がこんなことをしているのが馬鹿らしくもなってくる。理由が馬鹿らしいからだ。あんなガキみたいな主張にわざわざ付き合う必要性もないと思う。 ただ、それじゃあ宮ちゃんの気分が収まらないだろうし、それではこちらの気分も悪い。久しぶりのサバゲだし、こういう事も余興としては悪くはないだろう。 ゆっくりと歩を進める。視線はサイトから外さず、しかし他の感覚器官は常に三百六十度を監視するように。僅かな音に敏感となる事で、ノブサンは目だけに頼らない、全身の生体センサを活用した戦い方をするのだ。 そうして一本道を上っていく。ヤマゲリ山は広くはない。たまには狩人も悪くは無い物だな、とノブサンは不適に笑みを浮かべる。 カサッ――。小さな音に鼓膜が震える。上、と瞬時に判断し、彼は身体ごとそちらに向き直った。 すると上に黒いシルエットが浮かび上がったではないか。それが慌てるように後方に逃げていくのを見て取って、迂闊な、と思う。濃いブッシュに邪魔されて今はまだ撃てないが、射程圏内だったならば命取りだ。 身を屈め、迅速に移動する。瞬時に頂上に来ると、茂みの中に宮ちゃんらしい影を発見した。 「ノブ、覚悟!」 パン、パン、パン、と発射音が連続した。ポンプ・アクション・ウージーならではの連射速度に舌を巻く。 「壊れかけで、良くやる!」 嘆息するが、しかしノブサンは動かない。ここはまだ植物が茂っている。六mm弾はここを抜けられないだろうと判断し、冷静に音の発生源を拾おうとしたのだ。 (正面か……) どうやら影を掴まれてしまったらしい。宮ちゃんにも、ノブサンの居る所が判るのだろうか。だが、ノブサンは冷静に左に動くようにして、瞬時に後ろに下がった。こうする事で宮ちゃんは影を見失うのだ。 シット、と毒づく声が聞こえる。洋画でも見たのかな、とノブサンは苦笑した。 回り込むようにして右側へ。張り詰めた空気に、自分が本気になっている事に初めて気付いた。いいね、と思う。こういう緊張感も時には必要だ。 そのまま社の方まで行くと、静かに茂みで息を潜める。何処に居るのかと辺りを見回すと、一番奥の社に身を潜めているのが判った。でもバレバレだ。だって宮ちゃんだから! ザッ。迅速に移動する。ここからでは少し遠い。 手前の社に身を隠し、MPLを覗いた。向うはこちらを見失っているようで、キョロキョロと辺りを見回している。相変わらず、社から正面を探しているようだ。その姿はノブサンには丸見えだ。 構えると、照準。手ぶれが少し気になるが、ノブサンは、セイフティを外した。 (終りだ、宮……) トリガーを手前に引く。圧縮された空気が軽量の六mm弾を放出した。 だが―― 僅かなブレが命取りとなった。ノブサンは射撃に関して決してエキスパートと言う訳ではない。まだ五本の指で数えられるほどしかゲームをこなしていないのだから、それでもしょうがないと言えるだろう。 だが、ここで外したのは致命的だ。 「なにぃっ!?」 宮ちゃんの驚愕が聞こえた。手前で弾けた弾丸に狼狽したのだ。だが彼は即座に弾道を読むと、射線軸から隠れるように社に潜んだ。 「フハハハハッ、今のを外したのは痛いな、ノブよ!」 哄笑に奥歯を噛み締める。確かに今のは痛い。だが、まだだ! とノブサンは思った。 コッキング・レバーを手前に引くと、腰の後ろに挟んであったグロックを左手に持った。セイフティを外すと、照準を合わせる。 「まだだー!」 迂闊に顔を出した宮ちゃんに向けて引き金を絞ると、国産のG17は六mm弾を吐き出した。だがそれは上方向への回転に逆らえず、宮ちゃんの手前で軌道を変えてしまう。 (0.2gだった!?) 自分の甘さを呪う。 しまった、と毒づくよりも早く、宮ちゃんの弾幕が来た。それに身を潜め、どうするか、と思案する。 「どうした? 万策つきたか!」 調子こいて撃ち始める宮ちゃんに、 「罰当たりな!」 と叫んだ。さっきから社に六mm弾が弾けるのだ。 「ええい、うるさいわ! 勝った方が勝ちよ!」 「当たり前だろうが!」 弾幕が途切れる。スタガード・カアラムの一方が途切れたのだろう。もう一方を装填するのに空く間を見計らって、ノブサンは宮ちゃんに近づいた。 そこで気が付く。パスパスと少し情けない音がして、頭上から弾が降ってくるではないか。 (百円銃か……) バネ発射の銃は確かに威力も射程も無い。だがそれゆえに近接戦闘での膠着状態ならば、放物線を描くようにして障害物の頭上から攻撃できるのだ。 「考えたな……」 近くに弾着。少しずつではあるが、照準が正確になってきている。それに大人な笑みを見せて、ノブサンは冷静に自分の状況を分析した。 その頃の宮ちゃんU。 彼は今、適当に百円銃を撃っているのだが、そのシューティング・ポーズはアメリカの特殊部隊員なんかがよくやるポーズだった。銃を身体の片側に引き寄せて、寄せた側の左腕でグリップを保持・固定する、世に言う「横撃ち」の姿勢である。ストックを伸ばしたウージーを吊るしている事で射撃姿勢が取れないからと言う措置であろうが、宮ちゃんにしては中々理に適っていた。でも、それで小さな百円銃を構えている所はとても間抜けですよ。気を付けましょう。 六mm弾の雨に晒されながらも、ノブサンが慌てる事はない。固定弾倉内に五十発近い弾丸を込め、しかもDAO(ダブル・アクション・オート)で撃てる百円銃は確かに怖いが、その分、照準は不正確である。だから気を付けてさえ居れば脅威にはなり得ない。 落ち着いて、グロックの遊低を引く。薬室内に六mm弾を装填すると、彼はMPLから手を放した。 右手でグロックのグリップ・フレームを保持。親指と人差し指の延長線上に作られるV字の谷にグリップの後端の延長線が交わるようにする。そうすることで腕と銃身を直線にし、正確な射撃姿勢にするのだ。指が短い日本人はこれが取り難く、トリガーにもセイフティがあるグロックを撃つのは更に難しい。宮ちゃんはこれができなくて嘆いていた。しかしノブサンの指は長く、また細い。完璧な銃の持ち方が再現できるのである。 グリップに左手を添える。人差し指はブレ防止の為にトリガー・ガードへ。美しいまでのシューティング・ポーズ。照星と照門を合致させたノブサンは、グロックの銃身を倒した。 0.2gの軽い弾では、上方向に回転のベクトルを加えるホップアップは強力すぎて弾道を変化させる。それはつまり、弾丸は一定の距離で銃身から見て上へと移動すると言う事なのだ。 これを利用する。目測ではホップが最適の位置に来たノブサンは、社の右側から銃身を出した。こうする事で、六mm弾は宮ちゃんの居る場所でホップする。銃身を横にする事で、弾は左側に曲がるのだ。 「まだだ、もう少し……」 相変わらず、頭上からは百円銃の猛攻が来ている。すぐ耳元で六mm弾が弾けて、一瞬だけ、ひやっとした。だが、撃たない。まだその時ではない。 それから何秒位が経ったろうか。パスッパスッ、に弾丸の着弾が重ならなくなる。弾切れを予期し、ノブサンは、チャンス、と思った。 宮ちゃんが頭を引っ込める。同時、彼はグロックのトリガーを引いた。 パンッ――! 放出された六mm弾が、予測した通りのコースで弧を描く。右側に折れ曲がった弾丸が、社の影へと消えた。 「うわっ!?」 宮ちゃんの悲鳴。だが、それはまだヒットではない―― 「くそっ!」 ノブサンも思わず毒づいていた。背部に回していた。MPLを前面に。それとほとんど同時に、宮ちゃんが飛び出してくる。 「貴様ー!」 咆哮に、ウージーの乱射が混じった。ポンプ・アクションでの連射は総じて照準が正確である。 くっ、と呻いて、ノブサンはタイミングを待った。ザッ。手前に足音が来たのを見計らい―― 「倍返しだー!」 立ち上がる。右手と左手を交差させると、G17とMPLの二つの銃口が宮ちゃんに向いていた。不意を付かれたように、宮ちゃんの顔が強張る。 パンッ! 震えた空気は余韻を残す。一瞬の静止が空間を支配した後、宮ちゃんは自分の体を見下ろした。 弾着は左胸。そこに、MPLの銃弾が突き刺さったのだ。それをみて、宮ちゃんは、のろのろと顔を上げた。 「き……さ、ま、ぁっ……」 掠れた声が空に吸い込まれると、まるでのその喉の振動が原因のように、宮ちゃんの身体が後方へと傾ぐ。そして彼は、ゆっくりと、崩れた。 「宮……お前の事は、忘れない。……絶対に――」 ドサリ、と倒れ込んだ宮ちゃんに、ノブサンは声を掛ける。その寂しそうな視線は、自分の為に全てを捨ててしまった、矛盾を背負う男の為にそこにあるのだ。 カスタード・クリームの勝利。 * 「『ヤマゲリ山で謎の生物発見か!?』、だな……」 見出しは、と、不敵な笑みを浮かべながら山を下るヤマゲリラ。その様子が少し怪しいけれど、そこはまあ気にしないって事で。 「『残念ながらその正体は暴けなかったが、しかし重大な証拠を我々は発見した。謎の生物の足跡である。これがなにを意味するのか。また、これが何を示唆しているのか。……真相は未だ闇の中。しかしこれは希望の光であるのだ』――ん、上出来だ……」 クククッ。喉を鳴らす。満足した様子で小屋へと戻って来たヤマゲリラは、そこに宮ちゃんとノブサンが居ない事に気が付いた。 「ん〜? どうしたんだ、あの二人……」 ふと見てみると、頂上へと続く道に二人分の足跡があった。それにつられて上っていってみると、下って来たノブサン達と鉢合わせ。 そんな彼らの身体を観察してみると、土で汚れたような痕がある。なんだろうと思った。 「どうしたんだ?」 率直に聞いてみる事にした。 「いやいや、ちょっと……」 何故かすっきりとした顔で話す宮ちゃんに、んっ? と思う。 「どうしたんだ。まさかお前等……」 「ええ、ちょっとサバゲを……」 その一言に、ヤマゲリラは驚愕する。 「ど、どこで?」 「頂上です。御社さまを盾に」 ヤマゲリラの額に青筋が浮く。 「こん馬鹿がー!」 唐突な激昂に、宮ちゃん達が驚いた顔をした。 たいやき合戦 終り |
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