ゲリ長冬の陣エピローグ ――或いは序章の終り――(←サブタイトルに特に意味は御座いません) 二千五年一月某日夕方、ヤマゲリラ宅。 ゲリ長三人(ていうか宮ちゃん)は雪合戦でぐちょぐちょになった靴と靴下を脱ぎ捨て、ヤマゲリラの部屋へと移動した。 ここで今回の特別訓練の内容を吟味しながら、それぞれを労い合うのだ。つまりは宴会ですね。 「と言う訳でお疲れー!」 ヤマゲリラが杯(普通のコップ)を掲げると、二人もそれに倣ってコップの中の黒い液体を煽る。食道を炭酸が滑り降りていく感覚までもが理解できた。全身が水分を喜んで迎えたのだ。でも炭酸抜けたコーラだから甘ったるいだけっすよ。 「くはーっ、生き返る!」 「疲れたもんな。こんなに良い運動したのは久しぶりだ」 「いやな運動なら毎日の様にやってんだけどね。主に登校で」 「遠いから自転車でも大変だよな」 「私なんてオーバー10キロだから余計に辛い」 「でも電車だろ?」 「いやいや、通学定期が切れたんで自転車で」 「自転車!?」 「イエス!」 「お前馬鹿だろ……」 「イエス!」 「ちょっとは否定しろよ!」 彼らは陽気に、ガハハハハッ、と笑った。 そうして宴は続いていく。彼らはノブサンが持って来たガンダム VS Zガンダムで大いに盛り上がっていた。 「グフがーグフがー」 「死ぃねぇぇぇ、ダブルゼーター!」 「ザクに角を生えさせるまでは!」 「グフがーグフがー」 「ゴッグだ! ゴッグが襲って来たぞ!」 「対空防御、何やってんの!」 「グフがーグフがー」 「中々、やる。だがまだ!」 「アッガイだ……あの悪夢が蘇る……」 「グフがーグフがー」 「む、骸だ! 眠る事の無い骸がー!」 「早く止めを刺さねば!」 「グフがーグフがー」 「真冬のキリマンジェロは寒そうですな」 「妄想に憧れて暖めあわなきゃ」 「グフがーグフがー」 「『抵抗するのかっ!?』とか言われても……」 「抵抗しなきゃ始まらないしね」 「グフがーグフがー」 『ええい、五月蝿い!』 グフにしつこい宮ちゃんはノブサンとヤマゲリラにどつかれましたとさ。 おしまい。 「いやいやお終いじゃなくて……」 宮ちゃんが虚空に向って謎の発言をかますと、二人は大層心配した。強く殴り過ぎただろうか。それで自律神経が傷んでしまったのではないか。そう言えば何処と無くこの状況は南澤@に似てるぞ――、と。南澤@にとても失礼ですね。 そこでふと、 「あ、コーラが切れた」 ノブサンが呟くと、 「じゃあポカリ開けよう」 「誰から飲む?」 「ここは宮ちゃんだな。今日一番の功労者だ」 「いやあ、それほどでも……」 謙遜する宮ちゃん。でもデレデレですよ。あんまり人に褒められた事が無いんですね。 「まぁま、一杯……」 「おや、とっと、悪いですなぁ……」 どっかの居酒屋の風景を思い浮かべながら読んでみてください。でも汲まれているのはポカリスエット。 ダハハハッ、と笑いながら宮ちゃんがヤマゲリラのお酌を受け取ると、ふと笑顔を凍らせた。 「あー……」 濁っていた。 純白が見事に濁っていた。 それは、決してコップの色の関係ではない。上から見てもわかるほどに、そのポカリは濁っていたのだ。 「(コーラを)まだ、飲みきってなかった…だ、とぉ……?」 いやいやそんなに深刻になる事じゃないんですが。 しかし宮ちゃんは、コーラの引っ掛かる甘さを感じるポカリを飲まねばならなかった。 合掌。 それから小一時間ほどして。 今、ノブサンとヤマゲリラは二人でサバイバルモードに没頭していた。つまり宮ちゃんは非常に手持ちぶさたなのである。 そこで声に出してみる。 「あのぉ、暇なんですが……」 しかし二人には宮ちゃんに構っている暇はなかった。 「そこの煎餅でも貪り食っててくれ」 ヤマゲリラの言葉に視線を落とすと、宮ちゃんの目の前には煎餅があった。 宮ちゃんは仕方なく言われた通りにする。 少し経ってからノブサンが宮ちゃんの方を見ると、 「うわー! 何やってんだお前ー!」 「ヘプバーン」 謎の暗号を発しながら宮ちゃんが振り向くと、彼は一人で煎餅のほとんどを(欲張りながら)貪っているではないか! 「うわっ、煎餅ないし……」 「貪ってろと言われたから、ついね」 「ついで許されるかー! 俺まだ食ってねぇぞ!」 「ええい、一枚よこせ!」 宮ちゃんは煎餅を奪われた。 「ああ、返してー返してー」 「ええい、黙れ! 貴様はたらふく貪ってただろうが!」 ほとんど修羅場と化したヤマゲリラの部屋。しかし暴動は呆気なく終わった。 「そういやさ、次の企画はどうするよ?」 ヤマゲリラが割って入り、話の趣旨を転換したのである。 「次の長期休みだね」 戦利品の煎餅を咀嚼しながらノブサンが言う。 隣でボロボロになった宮ちゃんが、 「その時には幾らか連れてきますよ」 ボロボロのままに喋った。 「できれば合宿したいんだよね」 「そうですな。一日だと完全にやり込めませんし、私のスカウト者は遠い人ではここまでの片道で一時間越えるもの」 「南澤@とも連絡取りたいよな」 「マッキーが新しい銃を入手したと言う話が……」 「そろそろ装備の充実を図って買い出しもしたいしなあ……」 彼らは一斉に天を仰いだ。 「じゃあ、次のサバゲについての話し合いだな」 「そうしよう。入念な計画は必要だ」 「今までに無い大規模作戦になりそうだよね」 「あー、P90が恋しい!」 こうして彼らは作戦会議に没入していった。その内容は次回のお楽しみなり。って、事で。 今月(?)のおまけ。 ひたすらに煎餅を貪り食う宮ちゃん。欲張りは体に良くないですよ、気を付けましょう。 終り。 |
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