ゲリラリラ長野支部特殊自主訓練その1 「戦慄のたいやきチーム理論 の巻」 1、プロローグ 宮ちゃん♪は走った。 時は2005年八月後期の某日。夏休み中の異様な直射日光も何のその。一転して低気圧と前線に支配された本州中部の長野県はカラッ、と気持ちの悪い、そんなにわか曇り空。異常に上昇する湿度に息を切らしながらも、彼は一路、ノブサン宅へと足を急ぐ。 全ては、そう、彼らのため―― 『サバゲ・スタートぅはっ!』 『よおし始まりだぁ!』 『バシン! ぐぉぉっ、……。あはは、ヒットだよぉ』 『おいおいノブサン、経験者の君が真っ先にやられてどうするんだい?』 『ははは。ドンマイドンマイ次があるさ』 『まさかヒモにやられるとはねぇ』 『良いじゃないか。ヒモも頑張って練習してたんだよ』 『そうだぞぉ。大変だったんだからなぁ』 『おいおいヒモよ。顔を出したらスナイパーの意味が無いだろう』 『あれ? ほんとうだぁ』 『はははっ。全くドジだなぁ』 『あははははっ』 『あははははっ』 宮ちゃんはただひたすらに走った。ノブ家にたどり着くとNからゴーグルを回収する。礼を一つ言うと、即座に身を翻してヤマゲリ山へと駆け出さねばならない。雲の隙間から出現する太陽が恨めしい。宮ちゃんはギリギリまで体力を削られながらも、精一杯に走り、遠く頭だけを見ることの出来るヤマゲリ山に視線を送る。 待ってるんだぞ皆。必ず俺が届けてやる―― 『シロート何だからもうちょっと手加減してくれよぉ〜』 『いきなりP90のフルオートはひどいよぉ〜』 『オレなんか今回がサバゲ初参加なのに〜』 『ていうかP90が使われてるの見るのは今日が初めてだよ〜』 『対戦経験があるのはヒモだけだよ〜』 『あははっ。ごめんごめん、これからは気をつけるよ』 『あははははっ』 『あははははっ』 宮ちゃんはただひたすらに走る。太宰治も司馬遼太郎も司馬江漢さえも驚愕なくらいに走りつづける。息は切れ、肩は上下し、心肺は動機を繰り返している。それでも走る。ヤマゲリ山を目前に控え、近道に溜池の横を走り畑を突っ切り、宮ちゃんは入り口階段に辿り着いた。走る。木陰が厳しい階段は少し湿っていて危なかった。それでも走る。落石注意の看板。気を使って上を見ると、小さく何かが動く影。後退ると背後は急勾配の崖。鋭利な竹や枝が広がった空間に恐怖する。怖気づきつつ手を握り、ビニールの感触に我に返った。カサリ。その中にはゲリ長でストックしてあったゴーグルがある。そうだ、なにを躊躇っているのか。このゴーグルを待ち望んでいる仲間がいる。そいつらのために体を張ってやれるのは俺しかいないじゃないか。勇気が宮ちゃんの心に満ちた。ゴーグルがないばかりに不幸になる。そんなことは許せないことだ。空回りする正義感が宮ちゃんの足を踏み出させる。限界の疲労に歯を食いしばり、宮ちゃんは再び、そして力強く、走り出した。 全ては待ってくれる仲間の為に―― 『中々いい動きじゃないかウィリアムス』 『ああ。とても初参加とは思えない。見違えるほどの動きさ』 『まさか山道側ギリギリに潜んで奇襲を仕掛けてくるとはな』 『あそこまで引き付ける度胸、流石は峻厳殿だ』 『そういうハルマも素晴らしい動作だよ』 『デリンジャーでハイキャパに対抗できるのは君くらいだろうな』 『イギリス統合情報局でだいぶ揉まれてきたらしいな』 『いやいや。俺を鍛えたのはフランス外人部隊のレンジャー課程修了のときさ』 『カテ菌の飛び出しも良かった。ヒモも追い詰められた状態からのクオリティーの高い狙撃は感服だ』 『いやー。今回の新人は全員、動きが良いな。皆、南澤@並みの運動能力だ。これは宮ちゃんは必要無いかな?』 『これだけ豊作ならゲリ長も安泰ですな』 『あははははっ』 『あははははっ』 宮ちゃんは足を止めた。 そんな、と思わず呟く。彼の心の中で絶望が深く広がっていった。 いま、宮ちゃんの目の前には、横たわる巨木が存在しているのだ。一本道の登山道。回り道など存在しない。左は落石注意の急勾配。右は危険な森の広がる急傾斜。引き返してたら時間を喰う。体力の限界にある宮ちゃんには、別の道から他の山に入って登頂し、そこからさらに下ってヤマゲリ山まで降りてくるのは厳しいのが現実だった。そして目前で横たわる巨大な樹木……。悪天候の続いた最近、台風の到来なんかも相俟って、老化した木が倒れたのだ。遥か上方から折れたこの幹は、宮ちゃんの気力を奪う最後の砦であった。 しかし宮ちゃんは諦めなかった。 頼れるノブサンの横顔が、影差すハルマの背中が、カテ菌の明るい笑顔が、ウィリアムスの威厳ある御姿が、ヒモのヒモたらしめる軽薄な笑い顔が――仲間たちの声援が、宮ちゃんの背中を後押しした! ざっ、巨木に足をかけ、宮ちゃんは身を乗り出した。男・宮ちゃん♪の雑用魂を結集した、雑用人生をかけた大挑戦が、いま始まりを告げたのである。精一杯の腕力、そして体力を使って、彼は巨木に果敢に挑んでいくのだ。全ては仲間のため、友のために。 待ってろ、待っていろ―― * 「じゃあ次はどうするか?」 荷物置き場と化した手作り塹壕(作りかけ)で一服した彼らは、ノブサンの言葉でそれぞれが顔を見合わせ、指を一本立てた。 「もう一回やろうか」 ハルマが言った。それに全員が頷く。各自が装備の補給を済ませると、彼らは一様に立ち上がった。 「ウィリアムスに逆襲しなきゃな」 「全滅したもんね。流石にあれで終わるのは悔しい」 「ワシなんか全く出番なかったもの。少しはみんなのお役に立ちたいのよ」 カテ菌の切実な声にそれぞれが笑いながらも、先刻のゲームでノブサン、ハルマ、ヒモの三人を一人で全滅させるという快挙を成し遂げたウィリアムスへの再戦に燃える三人は、各自の銃を握り締めた。 行こう、ノブサンの号令に、おお! と気合充分に答えるそれぞれ。 鳥居に近づく途中でハルマがノブサンの傍による。 「さっきは最初にノブサンがやられたから浮き足立ったんだよな」 「…………?」 ノブサンは言葉の真意を測りかねた。その様子にハルマは微笑を浮かべ、 「頼りにしてるよ。大将さん?」 はぁん、と頷いた。意味を理解したノブサンは、ふふっ、と笑みを浮かべる。静かに目を閉じて俯き、次には再びハルマに視線を合わせていた。 「ああ。期待してくれて良い」 二人は黙って、拳を小さく打ち合った。 「よーし。チームはさっきと同じでいいかな?」 振り向いたノブサンがそう言うと、 『O,K!』 皆の気合は充分なのだ。 そうしてそれぞれが配置に着き、ゲーム開始の号令を待った、その時。 ガサリ。彼らの背後から物音と共に気配が出現したではないか。 「なんだ?」 思わずノブサンがそう口にしたときだ。 取り壊されてしまってはいるが、昔は小屋があったその場所に、宮ちゃん♪が立っていた。怪しげなバンダナといつものジャンパー姿。間違いない。見紛うはずもない、六年以上も付き合いのある風貌だ。 「宮ちゃん!」 フィールド上にいる誰もが待ち望んだ帰還だった。今まで野暮用でノブサン宅へと走っていた少年。ヤマゲリラが不参加のこのゲームを仕組んだ張本人であり、ノブサンが認めるとびっきりのムードメーカーである。 (ようやく来やがったな……) ノブサンは心中で不敵な笑みを浮かべた。これでようやく人数が揃った。本格的なゲームが楽しめそうだ―― えっ――? 一瞬、全員がそう思ったであろう。名を呼ばれたにもかかわらず宮ちゃんは何の反応も示さなかったのだ。いや、それどころか震えている。顔を下に俯けたまま、背中に精一杯の悲哀と激昂を孕ませながら、彼は何かを爆発させようとしているのだ。 「おいおい宮ちゃん……」 ハルマが思わず声を上げたときだった。唐突に顔を上げた宮ちゃんは、ヤマゲリ山全土に響かんばかりの声を張り上げてきたのだ。 『なにしよっとばおまんら―――――――――――――――――――――――!』 ら――!(←エコー) ら――――!(←エコー) ら――――――――!(←エコー) ら――――――――――――――――!(←エコー) ら――――――――――――――――――――――――――――――――!(←カイラム) プロローグ終了 本編へ キャラクター紹介! 今回サバゲ初参加の愉快で楽しい仲間を紹介するぞ! めんどくせぇ、別にどうでも言いや、とそんな風に考える君はここをすっ飛ばして本編へ行こう! 新人bP「くろひも」 旧姓「よっつぁん」。改称した今回、新たに装備も御一新。東京マルイのVSR−10Gスペックをオリジナル調整バージョンで使いこなす頼れるスナイパーに変身だ! 所々、いろんな所で間違ってはおりますが、基本的に射的能力は確かなので万事オッケー。臨時でヤマゲリラが務めていた狙撃手職を引き継いだ、そんな彼の今後の活躍に期待だ! ちなみに名前の由来は彼のもう一つのハンドルネームである「くろすみ」と、自慢のイケメンを活かして女の子をどんどこヒモにするアクドイ手口を皮肉った物になっている。女の子と見るや即座に手を出してヒモにするという人類の敵なので皆もこいつには気をつけよう。 新人bQ「ハルマ・わげ」 「いっちゃむ」としてゲリ長演習にも参加したことのある実力派。低音ボイスと司令官根性で皆を魅了する人望厚い彼だが、サバゲでもその真価は発揮されるのか!? これと言った欠点もなく突撃魂も溢れる彼は宮ちゃん以上に有能な存在といえる。相棒のデリンジャー一本でノブサンのP90に立ち向かうような勇猛果敢ぶりが今回も見られるのか!? 見物です。 ちなみに江戸時代中期に刊行された稲村三伯著の初の蘭日辞書「ハルマ和解」とは関係があるとかないとか。 新人bR「カテ菌」 ハルマ・わげと共にゲリ長演習に参加経験のある我が支部期待のホープ。ノブサンから東京マルイのMPLやタクティカル・マスターを拝借して今回の訓練に参加したぞ。普段はテンションの低い彼だが一度暴走すれば宮ちゃんや南澤@を超える無軌道ブリを発揮してくれること請け合いだ。根性と勇気だけでなく冷静な分析力と的確な指示力には定評がある素敵なナイスガイ。これからの貴方に期待してまっせ! いろんな趣味に引きずられて引きこもり疑惑の出ている彼ですが、実はお茶を好み質素倹約を旨とする癒し系。だから皆、そんなに彼を責めてやるなよ。将来きっと良い事あるさ。な! 新人bS「ウィリアムス・オガワ・シスタード」 世界の妹を支配下に置く、妄想の国の大皇帝。彼の国から現世の全ての人間の脳内へと妄想が輸出されている。文明の発祥は彼の革命的政策から始まったといっても過言ではない。我らにとっての神のような存在である。今回は現世に現人神として登場し、東京マルイのハイキャパシティ5.1を持参して参加してくれた。ゲリ長にとっての革命主となってくれるか!? 期待は高まるばかり! ちなみに彼は小川流槍術師範「小川峻厳」として薩摩藩を治める大大名でもある。小川が槍使いになるまでを描いた感動大作「星になった小川 ――忘れてしまった何かを……貴方は思い出す――」、小川が九州動乱を統一し世界に台頭するまでを描いたアクション超大作「興国のオギャ ――見ているか日本人……これがシスター・コンプレックスだ――」、大ヒット上映中! ……あれ? おかしいなぁ。みんな新人じゃあないや。 |
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