フリード君の小説講座出張版 〜シャイニングとシャドーの小説講座〜 6.「小説」の書き方の一例! |
||
「じゃあ、最後に、また『白銀』の書いた作品を例に どう書いていったか見てみようか」 |
||
「今回は、そうだな……割と最近書いた 『アメノアト』をどう書いたか解説してみるか」 |
||
「歌が凄く印象的な短編でしたね」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「物悲しいんだけど、何て言うか、優しい感じだったなぁ」 | (゚д゚ ) カール |
|
「この作品のキーポイントは 『透明感』 『歌』 『雨』 の三つ」 |
||
「テーマは 『変えること』 ってとこだな」 |
||
「元々は『鉄の雨』っていう短編を再構成したものなんだけど、 コンセプトは全然変わってないね」 |
||
「より登場人物の目線に近付けて書いた、って感じだな」 | ||
「『鉄の雨』も前にどこかで見たような……」 | (゚ω゚ ) フリード |
|
「ロンバルディアが今の形になる前の、投稿室に置いてあったね。 リニューアル前のデータはなくなっちゃってるけど、 『白銀』のウェブサイトには置いてあるよ」 |
||
「リメイク前とはまた違った印象があるかもな」 | ||
「まずこの話を考える時にイメージしたのは、 『歌い続ける少女』 だったかな」 |
||
「その少女について 『体を機械化された、閉鎖都市環境調整コンピュータの管理CPU』 っていう設定が直ぐに加えられたな」 |
||
「歌と機械って、それだけ聞くと結構ギャップがあるな」 | (゚д゚ ) カール |
|
「で、機械化されたって設定から 都市に必要なCPUっていう設定に繋がって、 そういうのが必要な世界、 っていうのが組み立てられていったわけだ」 |
||
「具体的には、 『過去に戦争』 『まともには人が住めない地球環境』 『人が住む為の閉鎖都市』 『閉鎖都市の環境調整用に少女を利用』 『少女は中枢CPU』 って流れを逆算して導いた感じだな」 |
||
「その過程に無理がないように細かい設定を考えて、 本編中の説明ができあがったんだ」 |
||
「ええっと、戦後で物資がなくて、とかそういうの?」 | (゚ω゚ ) フリード |
|
「そう、 『例え人間をパーツにするとしても、当時は使わざるを得なかった』 っていう流れをキャラクターの設定に盛り込んだ」 |
||
「対して、少年の方は 『そんな少女を連れ出す』 という役割を根底に組み込んでいるよ」 |
||
「ずぶ濡れな登場が印象的だな」 | (゚д゚ ) カール |
|
「タイトルにもある通り、 『雨』 ってのはキーポイントだからね」 |
||
「少年は 『現状を変えたい』 って意識の強いキャラクターとして描かれたな」 |
||
「少年の言葉のほとんどは 『この物語で主張したいこと』 でもあるね」 |
||
「諦めに満ちた少女と、 絶望しつつも希望を求める少年、 って対比だな」 |
||
「確かに対照的な感じですよね。 少女は物腰は柔らかくて優しい印象だけど、 何だか哀しい感じというか……」 |
(・ω・` ) フリード |
|
「少年の方は逆にちょっと荒い感じだな。 言葉づかいとかは気弱そうだけど」 |
(゚д゚ ) カール |
|
「ま、そんなこんなで人物と世界観の設定はできたわけだ」 | ||
「今回は原案もあるし短編でもあるからしていないけど、 本格的に長編を書く時はこういった設定なんかは 全部それ専用のファイルにメモして保存しているよ」 |
||
「全部……」 | (゚∀゚;) フリード |
|
「人物に関してなら 名前、年齢、容姿、性格、経歴、役割とか、 そいつを説明するのに必要な情報全部だな」 |
||
「経歴とかまで?」 | (゚д゚:) カール |
|
「無いよりは考えておいた方がいいよ。 少なくとも、物語開始時と終了時の立ち位置とか それまでの変化なんかはしっかり考えておいた方がいいね。 物語としてもそこが重要だろうし」 |
||
「そいつがどういう風に物語に関わってきて、 最終的にどうなるのかってのは伏線を盛り込んだり、 そこから連想させるイメージや意図なんかを付与する上でも 無いと困るからな」 |
||
「次に世界設定。 どんな世界なのか、ってのをやっぱり思い付く限り全部」 |
||
「どのぐらいの文明レベルなのか、 どんな社会が形成されてるのか、 どんな歴史を辿ってきていて、 物語の進行や結末によってどういう未来に向かうのか」 |
||
「具体的にはどういう感じですか?」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「今回で言えば、 『文明レベルは高めで、機械技術は発達している』 『けれど過去に戦争があって世界は荒廃』 『社会もほぼ崩壊』 『宇宙からの有害な宇宙線 を防げないほど自然環境も崩壊』 『戦争の残骸が地表に降り注いでくるため、 まともに生物が住めない』 『分厚い壁と、宇宙線を減衰するなどの環境調整用シス テムで 守られた閉鎖都市で細々と生き延びる人類』 『閉鎖都市のシステム中枢が少女』 って感じかな」 |
||
「で、そこから 『物語開始時点ですでに相当な年月が経って 閉鎖都市もシステムも少女も劣化している』 『大人たちの態度や生きながらえている 人々の意識の 根底にある諦めに嫌気がさした少年』 『耐えられなくなって雨の中をあてもなく走り続ける』 『少女の下へ向かう地下通路に迷い込む』 って流れから本編が開始 だ。 ここからは本編を読んでもらった方が早いな」 |
||
「まぁ、概略として 『少年が少女と出会う』 『少女の真実を知る』 『縛られたまま、受け入れ諦めている少女』 『少女の本心を問い質す少年』 『取り押さえら れ、連れ出される少年』 『「迎えに行く!」と叫ぶ少年』 『時が経ち、約束通り現れる少年』 『外へ』 って感じの流れを設定した上で、 そこに実際に肉付けをし ながら書き進めたわけだけどね」 |
||
「ふむふむ……」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「でも『アメノアト』って名前一人分しか出てきてないぞ?」 | (゚д゚ ) カール |
|
「今回は基本的に視点となる人物の主観で話が進むから、 必要ないと判断したまでだな」 |
||
「名前って結構重要なんじゃ……?」 | (゚∀゚;) フリード |
|
「普通はね。 ただ、今回はあえて名前を口にしていない人物は省いているんだ」 |
||
「何か理由があるのか?」 | (゚д゚ ) カール |
|
「まぁ、テンポを重視したってのもあるし、 会話の流れの中で名前を聞く展開を 無理やり挿入する必要もなかったからな」 |
||
「人物の設定だけど、少女の方は 『名前はシエル』 『閉鎖都市内環境調整用システム中枢CPU素体』 『見た目も、肉体的感覚もほぼ生身のままだが、中身は 機械』 『機械化されているため食事、排泄は不要』 『人としての見た目と肉体感覚を残したのは 少女を機械化した技師の独断』 『少女は基本的に自分の境遇を受 け入れている』 『技師の人との触れ合いのお陰で自我と心を保てた』 『普段から技師の人が吹いていた口笛の曲を歌っている』 『最後は少年に連れ出される』 『接続が途切れるため、生命維持機能が停止し、間もなく死亡』 『どのみち、もう機械化された体もシステムも老朽化していて限界』 って感じかな」 |
||
「ちなみに『最終的に死亡』 ってのはリメイク前の『鉄の雨』でも設定されてたんだぞ。 実際に死ぬとこまで書かれてはいないけど、 『接続されていることで生きながらえている』 ってのは仄めかしているから、読み込んだ人には分かったかもな」 |
||
「うぅ、可哀そうな設定……」 | (ノд`) フリード |
|
「少年の方は 『名前呼ばれないので未設定』 『閉鎖都市で生まれ育つ』 『人一倍優しさがあり、誰もが笑い合える世界がいいと思っている』 『誰かを犠牲にし てでも、全体を優先する都市の風潮に疑問を持つ』 『異を唱えるも無力』 『無力さに打ちひしがれながらも、 前を見て歩けるだけの意志の強さを持つ』 『少女の 下に偶然迷い込む』 『少女の我慢を見抜き、心の底から笑って欲しいと強く思う』 『連れ出された後、紆余曲折を経て世界を変えるために動き出す』 『約束通り 少女を連れ出す』 『少女の死を看取る』 って感じだね」 |
||
「いい奴だなぁ……」 | (つД`) カール |
|
「健気な少女と、真っ直ぐな少年の話だからな」 | ||
「この、 『犠牲があっても全体を優先』っていうのは、 過去の戦争時に人類が辛うじて生き延びるための 選択だったわけだけど、 少年にとっては妥協以外のなにものでもなくて、 『誰もが幸せになるべき、そうなるための道を探すべき』 って考えなんだよね」 |
||
「ま、甘い考えなんだけどな。 そういう議論は小説の書き方とは関係ないから置いておこう」 |
||
「あと、確定はされてないけど 『もしかしたら技師の子孫』 ってアイデアもあったりしたよ」 |
||
「それだとまた印象が変わるかも」 | (゚д゚ ) カール |
|
「本編で触れるところもなかったし、 本人たちにも知る術がないからそこは完全に裏設定だな。 決定されてはいないけど、そういう設定も十分有り得るわけだ。 その設定の名残りは少女が青年に 技師の面影を重ねるってとこぐらいだし、 これだけだと判別は無理だろうな」 |
||
「紆余曲折ってのも気になるけど……」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「そこは本編にとって重要ではない、 ってことで考えられてすらいないね。 というか、そこまで書いていたらどう考えても 短編の枠に収まらないし、 基本的に少女を中心に据えているからね」 |
||
「少女が出てこない期間が長く続いてもな」 | ||
「んー、そっかー……」 | (゚д゚ ) カール |
|
「最後の方に出てくる『女性』は 少年から成長した『青年』が 『紆余曲折』の中で知り合ったって設定のキャラクター」 |
||
「恋人、ですか?」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「特に細かな設定のされていないサブキャラクターだから 好きに想像してくれ」 |
||
「うわ、丸投げ!?」 | (゚д゚;) カール |
|
「恋人かもしれないし、 姉妹かもしれないし、 戦友かもしれないし、 相棒かもしれない」 |
||
「全部設定しておいた方がいいんじゃなかったんですか……?」 | (゚∀゚;) フリード |
|
「まぁ、その方がいいのは確かだけど、 考えなくても問題ないと思えるようなところだったりしたら、 考えるだけ無駄かも、ってところはあるからね」 |
||
「数行しか出てこないような ちょい役すぎる立ち位置のキャラ設定を濃くしてもな」 |
||
「さっきから聞いてると、 全部設定した方がいいって言ってた割に 設定されてないところ多くないか?」 |
(゚д゚ ) カール |
|
「いいところに気が付いたね」 |
||
「今回は短編だったってのもあるな。 できる限り短い尺におさめようとした結果、 触れないところや見えない部分は 考えることも含めて極力省いている」 |
||
「長編ならいつか使うかもしれないってことで 考えておいてもいいかもしれないけどね。 今回の場合は『短編』ってことで 話を短くまとめておく必要もあったから」 |
||
「考えておくに越したことはないが、 全く使わない設定を考える必要もないっちゃないからな。 むしろその分だけ時間の無駄ってこともある。 この辺の取捨選択の判断も重要かもな」 |
||
「その辺の見極めも難しそうですね」 |
(゚ω゚;) フリード |
|
「ま、プロットや設定を練る段階で大まかなことが決まっていれば、 実際書いて肉付けしている中で必要になりそうなら考えればいいし、 必要にならない、使わなさそうならそのまま書き進めればいい話だ」 |
||
「何だか適当な……」 |
(゚д゚;) カール |
|
「いや、まぁ、実際そういうの考え始めるとキリないしな。 どこかで一区切り付けないと書き始めることすらできないし」 |
||
「確かに……」 |
(゚д゚;) カール |
|
「ちなみに少女の名前『シエル』は フランス語で『空』を意味しているよ」 |
||
「名前も何かの暗示だったりするんですか?」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「意図してそういう名前を付ける場合はあるかもな」 | ||
「とはいえ、あんまり狙い過ぎると逆に 設定とか意図がモロバレだったり、 若干名前として不自然というか……」 |
||
「厨二病全開、って名前結構見るからな。 特に日本名。 まぁ、それが悪いとまでは言わないけどな」 |
||
「ともあれ、人物と世界が設定できたら 実際に書き進めて肉付けをするわけだけど、 これはもう書き手が思い浮かべた場面を そのまま文章で表現していくことになるね」 |
||
「そこから先がボクらの実践になるわけですね」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「そういうことだ」 | ||
「今回のコンセプトは 『透明感のある綺麗な物語』 だから、それを意識して書いているところはあるよ」 |
||
「うーん、でも『透明感』ってどうやって出すんだ?」 | (゚д゚;) カール |
|
「定義は人それぞれだから一概には言えないけどな。 今回の場合は『歌』で雰囲気を高めようとしているところはあるな」 |
||
「この歌、実際に聴いてみたいなぁ」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「イメージの元になっている曲ってのは実際にあるよ。 これを執筆時に聴いていた歌があるんだけど、 作者の中ではそのメロディラインを歌っている感じになってるね。 その歌のイメージってのは少なからず影響されてるし」 |
||
「お、聴きたい!」 | (゚∀゚ ) カール |
|
「版権曲だからここでタイトルは言えないな。 どうしても知りたい人は直接『白銀』にコンタクトを取ってみてくれ」 |
||
「よし、後で教えてもらおうっと」 | (゚∀゚ ) フリード |
|
「埃の積もって寂れた暗い部屋の中で、 『歌』をひたすら歌い続けている少女、って構図に、 ずぶ濡れで登場する真っ直ぐな少年、 雨、荒廃した世界と、 主要 人物の純粋な面と、色褪せた背景設定の対比で 雰囲気を出そうとしているね。 後半は外の開放感や、甦りつつある自然と、晴れた空、 と明るいものを前面に押し 出して、 それまでの暗く物悲しい雰囲気からの転換で カタルシスを出そうとしている感じかな」 |
||
「で、もう手の施しようがなくて救うことのできない少女の死を看取り、 それを胸に刻んで前に進む青年でシメ、と。 ま、おおむね好評価もらってるからな、 成功って言っていいんじゃないか?」 |
||
「実際、良い話だったと思うなぁ」 | (・ω・` ) カール |
|
「後は、そうだね。後書きとかでも触れてるけど、 後半の連れ出した後と、 青年視点のパートを入れるかどうかで悩んだね」 |
||
「蛇足かもしれない、って書いてありましたね」 | (゚ω゚ ) フリード |
|
「外へと出れた少女が実際に死ぬシーンとか、 青年が別の女性と少女を埋葬するシーンとか、 物語のシメとしてどうかってとこだな」 |
||
「確かに、せっかく外へ出れたのに死んじゃうのは かわいそうだよなぁ……」 |
(゚д゚ ) カール |
|
「設定上、手遅れであることに変わりはないし、 作者の中では『最終的に死んでしまう』 ってのは確定されてるんだけどな。 ま、読み手もそこに行くかどうか、っていうと分からないからな。 読み手に『希望』を残すべきか、ってとこで悩んだと言うべきだな」 |
||
「希望?」 | (゚ω゚ ) フリード |
|
「あのまま一緒に生きて行ったのかもしれない、 って思える場面で終わらせておいた方が『綺麗』だったかもしれない、 ってこと」 |
||
「そう言えば『鉄の雨』はそこで終わってたなぁ」 | (゚д゚ ) カール |
|
「そう、だから今回は最後まで書いてみたわけだ。 思い浮かべたものを全部盛り込んだ形だな」 |
||
「作者がちゃんと考えていても、 そこを書かない方が読み手には受けがいい場合 ってのもあるからね。 書いた結果、『無い方が良かった』って言われることもあるってこと」 |
||
「思ったことを全部書けばいい、ってわけでもないってことですか?」 |
(゚ω゚ ) フリード |
|
「極端な話、そういうことだな。 自分の思い描いたことを全部盛り込むことが 良い作品になるとは必ずしも限らない、ってこった」 |
||
「まぁ、これは『良い物語を書く』ってことよりも 『より良い作品を書く』って方向だから、 もっと上のステップの話になっちゃうんだけどね」 |
||
「う、まだ上があるのか……」 | (゚д゚;) カール |
|
「『白銀』だってまだ未熟だからな。 もっと上達することを目指すんなら課題はまだまだ山積みだぞ」 |
||
「とりあえず、話を戻すと『鉄の雨』で伏せた結末を 今回は盛り込んだんだよね。 リメイク前と内容自体に変更点ってのはあまりないから、 なら今回は最後まで書いてしまえ、と」 |
||
「リメイクに当たって増えた分は大体、 登場人物の掘り下げだからな。 少女の歌が、 ずっと昔に少女を機械化した技師の男の口笛だった、 とか、青年に寄り添う女性がいる、とか」 |
||
「青年が一人ぼっちにならいってのいうのは良かった、のかな」 | (・ω・` ) フリード |
|
「少女とくっつくと思ってたんだけど、 もう恋人かもしれない人がいたってなるとちょっと複雑かも」 |
(゚д゚ ) カール |
|
「そういう部分で賛否が分かれそうだから 迷ったってのもあるんだよね」 |
||
「読み手、書き手、双方の好みとかの問題にもなるんだろうけどな。 今回に限って言えば、 少女とくっつくって展開は少女が死んじゃうから 有り得ないんだけどな」 |
||
「とりあえず、『アメノアト』を書く時には大体こんな感じだったかな」 | ||
「ふむふむ、なるほど……」 | (゚ω゚ ) フリード |
|
前へ 戻る 次へ |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||