第二章
 第四話「変態たちの集い」



「ん? サッカーよ」
 と聖哉が言うと、はぁやっぱりですか、と利一が肩を落とした。
 なぜにかは分からんが。
「どうかしたのかいね?」
「いや、俺もサッカーなんですよ。伊佐樹さんもです」
「そらあかんで。リベリーとインザーギは決勝で戦わなきゃ」
「ドイツ大会の時は決勝でインザーギ出なかったじゃないですか」
「そういやそうか……でも2人が同じチームかぁ」
 聖哉が溜息をついた。
 聖哉は伊佐樹がダブったので、クラスに友人どころか知り合いすら居なくなってしまったのだ。可哀想ですね。
「去年は俺と同じチームだったのに……」
 と聖哉が伊佐樹に瞳を向けると、
「いや、お前バスケだったじゃん、去年」
 とツッコミが返ってきた。
 そうだったっけなぁ、と首を傾げつつ、
「何はともあれ、これでサッカーの練習ができるね」
 と祐人が笑った。
「ようやく、名目だけでも人を集めることができるのね」
 と聖哉が遠い目をする。
 今まで、サッカーをしようとした時に能動的だったのは聖哉と祐人くらいだったのである。
 それが今回、罰ゲームを回避するために全員が練習に取り組んでくれる為、本腰を入れて放課後を楽しめるという訳である。
「思いっきり蹴るぞー!」
 と2人で意気込んでいると、
「ドシタノ?」
 と片言で話しかけてくる男が居た。
 輝である。
 彼は続けて、
「イタミドメヲ、ヤルカラ。シンパイスルナ」
 と言ってきた。
「ケイジはいいよ」
 ウィンド・トーカーズでのニコラス・ケイジを真似たんですね。
 それはとにかく。
「トレさんトレさん」
 祐人が輝に呼びかける。
「何に興味がるんだい?」
「フランス語ちゃうがな」
 いつもの掛け合いである。ちなみにフランス語の「トレザントレサン」が、「興味がある」と言う意味になる。更にちなみに、「トレさん」というのは、輝の苗字である多比都を、フランス代表FWのトレゼゲ(ユベントス)のファーストネームである「ダビド」とかけたあだ名なのだ。ムリヤリです。
「んで? なんなのさ」
「サッカー選んだ?」
「何が?」
 唐突な質問に一瞬だけ止まる輝。
 しかし数瞬して、クラスマッチ? と聞いてきた。二人が頷くと、
「うん。サッカー」
「マルダとギャラスは?」
「バスケ」
「そうか……」
 祐人は頷いただけだ。
 そんな折、ちょうど啓一と峻と真二が通りかかる。
「おーい、真二や。球技種目はなんだい?」
「俺か? バスケ。峻たちと一緒のチーム」
「良いねぇ、知り合いが居ると。楽しそうだ」
 そう言いながら、聖哉は伊佐樹を見た。
 誰かさんがダブらなきゃなぁ、と思っているのである。
 しかし伊佐樹は気にすることなく、
「で? 今日は練習すんの?」
 と聞いてきた。
「うん。する」
 祐人が間髪入れずに頷いた。
 その次には峻たちを向き、
「お前らも来い!」
 ガッチリと肩を掴む。
「え? 俺らサッカーじゃないんだけど?」
「っていうか自分、バスケでも補欠要因だから!」
「え? 俺も行くの?」
 三人三様の声が上がる。
「行くらしいよ」
 と、聖哉は真二の疑問に答えて。
 そのまま全員が、近くのサッカーゴールがある運動場へと向かうのであった。

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