シーン00 「危機」


 どうしてこんなことになったのだったか。
 そこまで広くない洞窟の中で、目の前には大量の魔物がこちらへと雪崩れ込んでくる。
 視界の隅には、殴り倒された二刀剣士が気絶している。
 戦意を失い動かなくなった彼よりも、魔物たちはまだ抵抗力のある私を狙ってきている。
 目や鼻のないのっぺりとした白い顔を上下に裂くかのように大きな口からよだれを垂らしながら、鋭利な爪のある黒く長い腕と、人の胴回りぐらいはありそうな太い脚の、悪魔のような姿の魔物たちが私へと寄ってくる。
 爆薬の入った小袋を投げ、空中にあるうちにすぐ矢を放つ。
 細工の施された小袋は矢が当たると引火し、爆発を起こす。比較的軟らかい皮膚を持つその魔物には十分な威力を発揮する代物だ。
 先頭の魔物を数体吹き飛ばしたが、後続は止まらない。同属の死体を踏み潰しながら、こちらへと突撃してくる。
「く……!」
 思わず、呻き声が漏れる。
 いまさら逃げ切れるとは思えない。たとえあの剣士を見捨て、背を向けて走り出したとしても、洞窟の中では奴らの方に分がある。洞窟を脱するまでには追いつかれる。
 せめて援護する者がいれば、と思うものの、それも望めない。元々もう一人いたのだが、逃げてしまった。
 チームワークなんてあったもんじゃない。
 歯噛みしつつも、後退しながら弓に矢をつがえて放つ。先ほど負った脇腹の傷が痛んで、攻撃が一瞬遅れる。
 先頭の魔物が矢をかわした。後ろの魔物の頭を矢は撃ち抜いたが、先頭の魔物が止まらないのでは意味がない。
 しまったと思った瞬間にはすべてが遅かった。
 魔物の腕が届く距離まで踏み込まれて。
 そして――
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