コラム
――『魔法』の概念――

 最近は外国の映画や外国原作の物語をアニメ化したようなものが結構増えてきた。中でも、『魔法』を扱うタイプのものが多いように思う。「ハリー・ポッター」とか、「ハウルの動く城」とか。
 まず最初に私の感想から言うと、これらの話は余り好きではない。
 というのも、『魔法』の設定に不満があるからだ。
 日本のマンガや小説などで『魔法』的な設定は多く使われている。ゲームでも多い。
 ただ、日本で形成された『魔法』の概念には設定上の「限界」がある。が、外国の物語に登場する『魔法』の概念に設定限界は無い。
 この辺りが不満だ。
 外国の『魔法』の概念では、基本的に何でもできる。動物を別の動物に変えたり、物体を生物に変えたりと、錬金術に近いような要素も混じっている。原子配列変換ができれば、大抵の事は可能だ。その上、自然現象を操る、一般的な『魔法』的な力を使う事もできる。
 同時に、この『魔法』の発動は、動作・呪文・意思など、基本的に定まった形がない。無音無動作での『魔法』発動の場面もあれば、呪文を喋ったり、魔方陣を組んだりと、一定の法則がない。これでは滅茶苦茶だ。
 その癖、作中では『魔法』で突破できるような危機に陥って登場人物達がおたおたする。
 何のための『魔法』なのだろうか。設定上の限界がないのだから、大抵の事はできる。いや、それ以上の事だって可能だ。例えば、閉じ込められた時に壁を破壊するのも簡単だろうし、鍵を開けるだけでも十分できそうなものだ。作中で語られていないにしては、自由度が高過ぎるように思う。
 それが好きだと言う方には申し訳ないが、私は嫌いだ。
 何でもできるなら、敵が現れた時点で消してしまえばいい。相手の真意が判らないだとか、組織的な事だとかの問題も、魔法で情報収集ぐらいできると考えてしまえる。万能な設定だと、どうも話がチープに見えてしまう。
 私が好き、というか自分でも使っているのは、『限界のある魔法的な能力』が主だ。
 『ここまでできる、ここまでしかできない』という枠組みや線引きをきっちりと引き、制限のある中での駆け引きでなければ面白いと思えない。
 制限がなければ、何でもできる事になってしまう。それでは、単に相手よりも想像力が上回った方の勝ち、という事になる。何というか、それでは面白味に欠ける。
 映画、アニメとしてもビジュアルの演出が凄いだけにしか感じられない。いまいち物足りないのである。
 制限がある中で、どれだけ応用を利かせて相手を打ち負かすか、というものを見た方が面白いと思うのだ。
 動作制限であれば、一定期間の使用回数制限だったり、発動の際に魔方陣を描く必要性があったり、身体の一部に媒介になる紋様を刻んだり。物を使うのであれば、札や杖といった品を媒介に能力発動を行うという設定もある。
 呪文、要するに声による制限は一般的なものだと思う。声や言葉といったものを媒介に、魔法的な力を行使するというものだ。
 色々と設定はあるし、制限をオリジナルで作る事も十分に可能だ。
 そして、その制限を生かして緊迫感を出したり、主人公を窮地に追い込んだり、逆に相手を上手く打ち負かしたりする方が面白いと思うのである。
 設定などを色々考えずに、ただ「そういうもの」として見れば良いと言う方もいるかもしれない。だが、私は捻くれているのでそれが中々できない。本当に、魅力のある作品であれば気にならないかもしれないが、その場合『魔法』的な力は話のアクセント程度でしかなく、さして重要なポジションになかったりする。言い換えれば、小道具に過ぎない扱いであり、かつ物語そのものが十分な魅力を持っていれば、魔法の概念云々は気にならないという事だ。
 が、やはりこれが中々無い。
 大抵、『魔法』を使う作品はビジュアルだったり演出だったりが凝ったものになりがちだ。見ている者を「おおっ!」と言わせたいのだろう。
 ただ、演出やビジュアルが強化されてしまうと、明らかに小道具の範囲には収まらなくなってしまう。そうなると私は設定が気になる。
 物語そのものも、魔法の演出に負けてしまっているものが多い。
 そもそも、『魔法』やそれに関連するアイテムの概念がはっきりしていないと価値観が掴めない。どれだけその人物が強いのか、そのアイテムにどれだけの価値があるのか、それを巡って争うだけの意味があるのか。不明瞭なものが多いように思う。
 やはり、映画サイズの作品単体で『魔法』的なものを扱うには、説明を挿む時間も足りないのだろうとは思う。
 因みに、「読者の想像力に任せる」みたいな意見は願い下げだ。話の展開、物語終了後の登場人物達のその後を任せるならともかく、設定などでそんな事はしないでほしい。製作側の脳内で全て補完されていては作品として駄目だと思うのだが……。
 色々と書いてきたが、要するに設定の曖昧な能力概念を使う作品は私には合わないという事だ。
 もっとも、私の場合は「戦闘」に重きを置いているが故に概念設定を駆使したものの方が戦略性が出て、やりやすく、かつ面白いと思っている部分が大きいのだろう。
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