機動戦士ΖΖガンダム 〜ダプネーの嗚咽〜

 <作品紹介>
 姉妹サイト「G−NeXt」にて公開されているオリジナルのガンダム小説です。

 前作、「宇宙の女帝」と同じく、ZZガンダムをベースとした二次創作ですが、展開などは原作と大幅に異なる「If」の作品となっています。
 <批評本文>

 今回も前作「宇宙の女帝」と同様、「オリジナルのガンダム作品」として批評を行い、原作との比較などは極力行わない方針で批評させて頂きます。

 まずは全体的に読んでみて感じたことを。
 前作と同様、軍事や政治などの状況や行動に関する描写は非常に濃く、高いレベルでまとまっているように思います。
 階級などを資料やあとがきなどで触れているように、自作しているところからもこだわりが窺えます。
 文章表現に関しても最近ではあまり見かけないようなやや難しい単語などが見受けられ、読み易さとしてはマイナスに思うところもありましたが、逆に言えば語彙が豊富だということですので、表現としての巧みさを感じます。
 前作からあまり時間が経たずに頂いた作品でしたので同じ指摘にもなってしまいますが、括弧の使い方や、セリフ部分における行頭のスペースなど、やや快適性を欠いていると感じる部分がありました。

 心情描写は「恋」に関する意識が主人公にあることもあってか、前作と比べて多い印象です。
 状況に関する説明などの情報量が多く、それでいて物語の展開も中々早く、起承転結や伏線などもよく考えられていると思います。
 ただ、前作でも感じた「淡々としていて少々起伏に欠ける」という印象はあります。
 情報量が多く、言い回しや描写などの緻密さが逆に読んでいる際のスピード感を損なっているのかもしれません。読んでいてテンポが悪いというわけではないのですが、最初から最後まで勢いが全く変わらないため、起伏に乏しく感じてしまいます。
 戦闘における細やかな描写は決してマイナスではありませんが、読んでいて盛り上がりを感じることがありませんでした。

 また、場面の移り変わりが激しく、頻繁に視点が変わるので起伏に欠ける割に忙しない印象もあります。
 第二章のハマーンとグレミーの会話シーンですが、視点が最初はハマーンに寄っていて、心情描写などもハマーンのものが描かれているのに、一行空けて段落が区切られる前だというのにグレミーが登場してからはグレミーに視点も心情も偏っています。
 状況や当人の心理などを描写するために視点が変わっているのだとは思いますが、頻繁に行われているため落ち着きがなく感じます。
 また、主人公はジュドーであるのに、視点移動やそこでの情報量が多いためかジュドーに視点が向いている場面が少ない印象もあります。
 個人的な感想ですが、ダブルゼータというタイトルの割には当のダブルゼータで活躍している印象がほとんどないのも少し残念です。
 アクシズ、グレミーとハマーンを中心にした物語という印象が強く、ジュドーやダブルゼータが中心になっている物語に感じられません。ダブルゼータの名を冠するのであれば、もっとジュドーやダブルゼータに焦点を絞った方が良かったように思います。

 それと、少し気になったのは「後に〜のだ」という表現です。心理面を描いている際にはそのキャラクターに視点が寄っているのですが、その後でこういった時系列的に先のことを示唆する描写は必要なのかどうかということです。
 一通り読んだところ、その書き方が影響しているような部分は無かったようなので、映画的にコンパクトに収めるというコンセプトのようですし、蛇足ではな かったかな、と。こういった書き方は重要な部分であればあるほど、ネタバレしてしまっているようなものなので、気になりました。

 蛇足ですが、逆襲のシャアに繋げるのならば、サイド3の独立は成功しない方が良かったかなとも思いますが、逆襲のシャアの時点でサイド3がどうなっているのかには触れられていないのでこういう形にしたのかとも思えますが。

 総じて、作品としては良くまとまっている印象です。
 前作「宇宙の女帝」からの続きとして見ても、悪くない印象でした。
 ただ、個人的には最終的に身を退いて世界の片隅に行こうとしていたハマーンを追撃して仕留める理由が乏しかったような気がします。色々と掌の上で動かし てきてはいましたが、登場人物の描写としての敵としての位置づけがもう少し欲しいところでした。状況としてはこれまでの責任というのもありますが、身を退 いた後も害悪になりうると明確に感じられる描写がなかったため、最後に追撃する際の理由付けが弱かった印象です。
 ジュドーのグレミーの死に対する激昂はあると思いますが、前述の通り起伏に欠ける文章の弊害か、読んでいた私には動機付けとしてはイマイチ印象が薄く、 ショックは受けても怒りや憎悪を抱いているという印象が弱いのです。プルの言葉による後押しの後も、初恋の相手であるというジュドーの意識が押し出される 辺りで勢いが衰えている感が否めません。
 感情的にハマーンを敵とするならもっと勢いを、後々の害悪になりうるとするならその推測がはっきり読み取れるだけの情報があると説得力が増すと思います。
 また、淡々としていて戦闘シーンなどは緊迫感に欠ける印象もあり、惜しいです。
 前作と比べると物語の厚みはあるように思います。
 ただ、やはり緊張感であったり、盛り上がりであったり、ダブルゼータの活躍の少なさであったり、作品を通して起伏というものをあまり感じられず、惜しい作品だと思いました。

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