あとがき
 
 
 というわけで、当ブログでの連載コーナー通算160回の更新にてようやく終了となりました。
 本作は過去に遠藤さんとのやり取りの中で、「自分以外に原案を出してもらって、それを元に作品を書いてみるのはどうか」といった話が出たことがあり、そ の際に頂いた簡単な草案をベースに書かせてもらったものになります。著者と原案が別々に記載されているのはそのためでした。
 
 実のところ本来はもっと短く終わる短編作品の見込みで書き始めたつもりだったのですが、終わり方を特に決めていなかったこと、日常ものだったこと、題材 的に思考実験的な側面が強く出て、あれやこれやと考えを巡らせることが出来てしまったことで、終盤は答えのない問題をぐるぐると考えているだけみたいな形 になってしまい、そこから抜け出してどう終わりに持っていくかに頭を悩ませる結果となってしまいました。
 打ち切り感のある終わり方になってしまったのも反省点です。
 
 AMATのシルヴィが何かしらの事件に巻き込まれて破損するなどの事態を起こして、新展開に突入させる、という案も浮かんだには浮かんだんですが、そう するとそこからまた長くなりそうだし、そもそも事件が特殊なものでない限りは修理や部品交換をして終わる事故として処理しそうだし、前半との空気感とか方 向性とかにもギャップが出そうだして没に。
 遠藤さんから頂いていた原案では「アンドロイドが想定外の行動を起こして」というネタも書かれていたのですが、書き進めていくうちに「作中の時代設定、 技術設定でそれが起きたら大問題になって商品として流通させられなくなりそうだなぁ」と思ってしまい、そうした方向性に進まなかったことで静的な作品に なってしまったのも事実ではあります。
 アンドロイドとの日常生活ものの話としては何かしらそうした非日常を入れ込むのは定番だと思うのですが、本作においては意図的にそうした展開を避けた部 分もあります。商品としてしっかり成立して普及している現実の延長線上的な世界観を想定した思考実験をしてみたわけですが、イレギュラーがないと物語に起 伏や変化を出すのが難しいですね。ジリジリと進んでいるのか進んでいないのか分からない状態を続けてしまった感は否めません。
 これ以上続けても終わりが見えて来ず、徐々に変わっていくとしても相当な時間がかかりそうだったので「これからも続いていくエンド」みたいな感じにしてしまいました。
 とは言え、私の中でのコンセプトは当初から「高度なAIを搭載したアンドロイド的商品との生活シミュレーション」という思考実験的なものだったので、そこはブレていないと思っています。
 逆にシミュレートに寄り過ぎて物語として面白いのか微妙な気がしなくもありませんが……。
 
 ともあれ、最後までお付き合い頂けた方、そして原案を頂いた遠藤さん、ありがとうございました。

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