第一章
 第三話「変態じゃあない方々が現れた」



 利一が所属する2年E組のホームルームは球技大会についてであった。
 朝っぱらからなんやねん、とウダウダしながらも、球技大会の希望種目(バスケットボール、サッカー、バレーボールの中から選ぶ)に名前を書かねばならないので、正直メンドイ。
 とりあえず、人数的に余りになりそうなバスケットに名前を書こうとして、
「あれ? 埋まってる……」
 ちょっとしたショックを受けた瞬間。
 ……………………。
 じゃあバレーで。
「ってこっちも埋まってる!」
 ショック!
 ガックリと肩を落とした。
 ここでサッカーを選んだら、またフランク・リベリーと呼ばれて右サイドを任されてしまうではないか。
 はぁ。
 まぁしょうがない。
 利一はサッカーのところへと向かった。
「お、リベリーもこっち?」
 目前に伊佐樹が居た。
「エトーさんもサッカーですか」
 伊佐樹はダブりである。だから利一と同じクラスになってしまったのだ。
「だってバスケとか無理だし。バレーはスパイク届かないし」
 身長的な問題ですね。
「最初からサッカーですか」
「だって罰ゲームを回避するためには、まだ得意な競技にしなきゃだし」
「……得意な競技ってあんた」
「リベリーだって、この中ではサッカーが一番マシだろ?」
「そりゃ、見学に徹しようかと考えてた他の競技に比べれば」
「じゃ問題ないじゃん」
 さすがは伊佐樹、訳の分からない自信である。
「でも、また先輩たちにフランク・リベリーって言われるんですよ……」
「俺はどっちで呼ばれるんだろうな?」
「一人で強引に持ち込んだらエトー、誰かのパスに合わせたらインザーギじゃないですかね」
「そうか」
 伊佐樹は納得した様子だった。
 チラリ、と女子を覗くと、どうやら辺莉 美玖はバスケットのようだった。
「……………………」
 だからどうした。
 なんだかあの一件以来、逆に自分が意識し始めている。
 元も子もないではないか。
(それに実は先輩の問題だしなぁ)
 いかんなぁ、と眉間の皺を揉んでみたり。
「そういや他の奴は何を選ぶんだろうな?」
 と伊佐樹が聞いてきた。
「さあ? でも、結構な人数がサッカーに行くんじゃないですかね」
 さりげなく部活の話題である。
「でも、峻と真二はバスケに行く気がするな」
「そうですねぇ。サッカー好きじゃないですから、あの2人は」
 ギャラスと小野のクセに、と2人で呟いてみる。
「他は?」
「祐人さんや多比都先輩はサッカーじゃないですか、やっぱり」
「あとは啓一と聖哉か?」
「丸田先輩は分からないですけどね、上井先輩は……」
 話の途中だが、廊下から足音が響いてきた。
 ガラッ、と教室前のドアが開いて、担任の大平先生が入ってきた。
「みんな、席に着け――あ、いややっぱ良いや。そのまま聞け。静かにな」
 しかし一部はガヤガヤとうるさかった。
「おい鈴木、黙れー。バキッて折って窓から捨てるぞー」
 と大平先生がふざけたので皆が黙った。
 それを見て、先生が教壇から皆を見回し、
「突然だが転校生だ。あぁー、男子諸君は気を落とすが、男子生徒だ」
 ええー! と教室のそこら中で大ブーイング。伊佐樹と利一も加わっている。
「黙れー。携帯バキッ、て折って窓から捨てるぞー」
 みんな黙った。
「女子は喜べー。今回のは上玉だぞー」
 キャー! と言う女子の黄色い悲鳴と、男子の更に苛烈したブーイングが木霊する。ちなみに伊佐樹は、自分のヒモポジションが取られそうなので声の限り叫んでいた。
「おい江藤、黙れー。お前をバキッって折って窓から捨てるぞー」
 みんな黙った。
「俺だってどうせなら可愛い女の子の転校生が良かったんだがなー。こればっかりはどうしようもないからなー」
 先生はサラリと教師にあるまじき言動をした。
「おいお前ら、入って来ーい」
 先生がそう言うと、少年が教室に入ってきた。
 2人。
(2人……?)
 あれ? 同一人物?
 そんな風に思ってしまうほど、似通った容姿。
 しかも2人とも端正な顔立ちだ。
 身長は平均的だ。170センチと少し。大して変わらない。
 ただ、その真っ直ぐに通った鼻梁と、完全な左右対称の美しい骨格、ふと蠱惑的な、女性ならばイチコロな感じの眼差し(男ですら流し目で見られたら落ちるかも)など、なんとも美少年な感じのが、2人。
 教室内の全員が息を呑んだ。
 先生を除いて。
「な? 上玉だろー」
 のんびりとした声が静まり返った室内に響き。
 キャー! という金切り声が、直後に支配した。

 ちなみに。
 転校生は双子で、兄が老貴 春輝(ろうき はるき)、弟が老貴 秋寛(ろうき あきひろ)と言うらしい。
 席は兄貴が辺莉 美玖の隣、弟がその前だった。
 ややこしい。

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